何もかも、今に始まったことじゃない。

ウルトラマン好き。めっちゃ好き。

『変身』できなかった僕たちへ #シン・仮面ライダー

一応ネタバレ注意。

 

ガタガタ言ってねぇでさっさと見てこいよ。

俺も含めたクソみたいな感想群を見て満足しないでくれ。

 

最近では珍しく感情的にならずに話せると思う。

シン・ウルトラマンは取り乱していたし、まあ仕方のないことだとは思うんだけど。

 

冷めている僕の文章でいいなら読んでいけばいいと思う。

 

間違えて二回観た。

 

凄く面白い映画だった。真っ直ぐな仮面ライダーだったと思う。むしろ僕はこれ以外のシン・仮面ライダーを許せなかったと思う。これがベストだった。

自分の持ってしまった力に怯えてずっと震えていた本郷が、仮面を被ると静かに敵と相対する。そうするしかないほどに追い詰められても自分の意思で道を征く。

結果的には死んだが、ウルトラマンの迎えた死とは圧倒的な違いがあったと思う。形容し難い話だから頑張って話すけど、そのまどろっこしさをどうか許してほしい。俺にはこうするしかなかった。

 

蜘蛛でのライダーがあまりにもヒーローなのが、勿論原作通りのアクションを再現してるのはわかっているけど、この記事ではそんな俯瞰した話を取り扱う気はない。

あの時の本郷猛は本郷猛ではなく、だからこそ最大公約数の「仮面ライダー」だったのだろうと思う。そこから先はヒーローから解き放たれていく様子が描かれているんじゃないか。上手く言葉にならない。なんか言い当てられない。

 

つくりがウルトラマンと同じで総集編映画を楽しんでいるような感覚だった。必要な姿だけを絞ったような、だからある意味では物足りなさもあって、彼らの旅をもっと楽しみたかった。一緒に生きたかったのかもしれない。立花や滝が本郷の優しさを嫌悪していたわけもなく、例えば本郷が緑川イチローとの戦いを拒否したならどうにかして蝶オーグの討伐を成し得ていただろう。そうしたら仮面ライダーは死なずに済んだのかもしれなかった。けれどそれはゼットンを前に人類を見捨てるウルトラマンがありえないのと同じく、絶対に成立しない話。

見ての通り集団遺影です。

絶望を知った二人の男がいた。

一人は「自分」を変えようとした。

一人は「世界」を変えようとした。

戦うことを選択した二人は奇しくも交わることになる。

一人は戦うことで自身を取り巻く「世界」が変わってしまった。

一人は戦うことでちっぽけな「自分」が変わってしまった。

残念ながら各々が望んだ変身はできなくて、多分『シン・仮面ライダー』はそういう作品だった。

「暴力を以て暴力を終結させる」──二人の目指す場所は同じだったのにね。

 

本郷猛という青年が「変身」と言わなかったのは、仮面を被ったとて、バイクに跨ったとて、ベルトを巻いたとて、何も変えられなかったからであろう。非力な自分は最後まで非力なままだった。だから彼らは孤独を選ぶ。

仮面を被った者が悲哀と絶望と孤高を背負うのなら、それを共有できるのは同じく仮面を被った者だけであろう。だから最後の戦いは何よりロジカルだった。

誰もがその気になれば変身できるわけじゃない。きっかけがあったって必ずしも掴めるわけじゃない。失敗することだってある。微妙な成功だってある。

 

これは多分、変身できなかった僕たちへ。そんな映画だ。

 

本郷は敵にも味方にも言われていたように優しい青年だった。蜘蛛をはじめ、どんなに醜悪な敵であっても戦いの後には黙祷を捧げていた。可能な限り戦いを避けようとしていた。けれど彼は社会に適応できなかった。そんな彼が最後に吐露した心情。

 

 「僕には人がわからない」

 「だから知りたいと思う」

 

泣きそうな声でそう言った本郷の姿を見て、僕は心が揺さぶられた。自分を変えたかったのに、それでも全然わからなくて、ただでさえ人がわからないのに自分は人間からかけ離れていく。辛かっただろうな。線を一本足せば幸せになるつっても、誰が一本足してくれるというのか。むしろ他人の幸福を影から支える存在なんだと言われてきたんだからどうしようもない。

 

 「人が生きる中で無駄なことなんてない」

 

ありきたりな言葉は、折れてしまいそうな自分の心を支えるための厳しさで。

イチローの味わった絶望を肯定も否定もせず「ちょっとだけわかる」と正直に向かい合った。

 

本郷猛は変身できなかった、ただ、仮面を被っただけの等身大の青年だ。残念ながらその仮面には責任とか過去とか色んなものが詰まっていて、もしかしたら本郷にとって超がつくほどしんどいものだったのかもしれないけれど、それもひとつのバリューなんだろう。重圧がなきゃ動けない人間は多い。

 

「父さんのように優しくなりたいし、父さんと違って力を使えるようになりたい」

 

父が残された家族より他人を優先するような人間であると語った姿はどうにも切なく見えたが、そんな彼だからこそ最後の戦いに復讐を持ち込まずに済んだのだろう。

イチローがしていたことも「復讐ではない」と言っていたが、最終決戦での吐露は違っていた。だが本郷はイチローを最後まで救おうとして醜く足掻いた。必死に縋りつく姿に蜘蛛戦の勇姿はなく、そこには本郷猛の魂(言い換えればプラーナか)だけが煌めいていた。その戦いに「高い場所から手を伸ばす」ような高尚さはなくて、「底にいた本郷がイチローを水面に押し出す」ような生ぬるさというか、どうしようもなさがある。戦いに参加していたってそれを眺めているしかなかった一文字隼人とか、本郷が本懐を遂げるまで待ち侘びるしかなかったルリ子とか、そういう人々は視界から消え失せる。

 

ウルトラマンは俗の中で倦怠を迎え死を自ら成し得たが、仮面ライダーは仕方のない状況でほんのり優しく微笑んで泡と成って世界から消えてしまった。

イチローの「このままでは死んでしまう」という物言いから、もしかしたら死なずに済む道があったのかもしれない。或いは一文字のプラーナを分け与えてもらったり、イチローの僅かなプラーナを奪い取ればそれは可能だったのかも。それでも本郷は死を選択した。それはきっと諦念とか、失望とか、嫌なことを忘れたいだとか、そういうものも孕んでいたんだろうけど、だからといって彼の優しさが損なわれることはない。

 

全然言いたいことが纏まらない。なんか気持ち悪い。不完全燃焼。なんか追記していっていいか。言葉が紡げたらその度に書いていくことにする。頭の底から言葉が湧いてくるあの感覚が今回ばかりは全く掴めない。なんとか無理に話してるけど、納得いってない。本郷の優しさをもっと言語化したいのに、彼や一文字が孤独じゃないと伝えたいのに、上手くいかない。終わり!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!イライラする。